不安障害

医師や専門家が深く詳しく解説します

不安障害

医師や専門家が深く詳しく解説します

不安障害 とネット社会の関係とは? 不安な気持ちが「依存」に?

公開日
更新日

 
執筆:須賀 香穂里(ライター)
 
 
情報科学が著しい成長を見せる現代、インターネットは素早く様々な情報を手に入れたり、メールやSNSアプリなどを用いて、インターネットを介して人と会話ができる便利なツールです。
またスマートフォンの普及により、家だけでなく職場、学校、さまざまな場所でインターネットが身近になってきています。
 
このようなネット社会で、もしいつも持ち歩いているスマホを忘れてしまったらどうでしょうか? 家のパソコンが壊れてしまったら?
インターネットが使えなくなってしまいます。情報化が進む現代で、これは由々しき事態です。
 
ではあなたはこのような事態に陥ってしまったとき、どんな気持ちになるでしょうか。外部との連絡が取れない、仕事ができないことに不安を感じるかもしれません。
もしもこの不安を、居ても立っても居られない、冷静な気持ちを保っていられずパニックになってしまうほど強く感じてしまうとしたら、もしかすると『 ネット依存症 』と共に『 不安障害 』という神経症を併発しているかもしれません。
今回は、この『 不安障害 』とネット社会の関連性について考えていきたいと思います。
 
 

『 不安障害 』とはどんなもの?

 
『 不安障害 』とは神経症の一種で、これまでは「ノイローゼ」と呼ばれてきました(1)。もしかしたらこちらの呼び名のほうが有名かもしれません。
 
人間には自分の身を守るために、見知らぬ場所に行ったり、人にあったりするとき、体と心を緊張させ、心構えをさせる機能があります(2)。
この体と心の緊張が不安です。不安を感じるのは悪いことではなく、むしろ必要なことです。
 
しかし、「いつ誰から連絡が来るか分からないから携帯電話を手放せない」「事故が怖くて車に乗れない」などのように、行き過ぎた不安を感じる状態が長く続くのは好ましくありません。このような状態を、『不安障害』または『パニック障害』と呼びます(2)。
今回は『不安障害』と『パニック障害』は同種のものとして紹介します。
 
 

スポンサーリンク



『不安障害』の症状(1)

 
『不安障害』の不安発作は、その名の通り強い不安に襲われることによりパニック症状を起こしたり、身体的な不調が現れたりしますが、その症状は人によって様々です。発作は突然起こり、数分間で終わるのが一般的ですが、中には長時間続くも音もあります。
また一般的な症状としては以下のようなものがあげられます。
 
動悸 急な不安
・対人恐怖
・わかってはいるけどやめられない症状
・強迫観念
・呼吸困難感
めまい

 
また、一度『不安障害』『パニック障害』の発作を起こすと、また発作が起きるかもしれないなどの不安から発作を起こしやすくなってしまうことがあります。
その状態が以下の2つです。
 
 

予期不安

「また発作が起きるかもしれない」などの不安を持つこと。この不安から再び発作を起こし、また不安になるという悪循環になる。
 
 

広場恐怖

発作が起こった場所や状況に対して不安を抱き、そのような場所や状況を避けるようになること。閉所や人込みなど逃げ場のない場所、状況であることが多い。
 
 

『不安障害』の特徴(1)

 
厚生労働省の調査では、『不安障害』などの精神疾患で医療機関を受診する患者の数は平成23年には57万人に上ることが分かっています(3)。
『不安障害』は、20代から30代、40代で発症しやすく、その特徴としては、
 
・神経質
・こだわりが強い
・面倒見がいい
・完璧主義

 
などの性格傾向があることがあげられます。
このような性格の人たちは、少しでも違和感や不利な状況に直面すると、不安を感じやすい傾向にあるのです。
さらに、『不安障害』のような神経症の患者は意志の言葉や態度に敏感であったり、逃げ場のない場所が苦手であったりします。
 
『不安障害』のチェック方法については、「不安障害のチェック方法とは? 気になったらまずはチェックを!」の記事で詳しく説明していますので、ご参考にしてください。
 
 

スポンサーリンク



不安発作が起こるのはなぜ?

 
『不安障害』や『パニック発作』はウイルスなどによる体の病気ではないため、発作を起こし手病院で検査を受けても体に異常は見つけられません。この疾患は“ものの考え方や行動の仕方”が原因なのです(2)。
 
めまいがしたり不安を感じるのは、健康な人でもよくあることです。先ほど、『不安障害』になりやすい人は神経質な人が多いという特徴を述べましたが、神経質な人は誰にでも起こりうるめまいや不安を病気のせいではないかと気にしすぎてしまうのです。その結果不安が大きくなり、体の症状を敏感にとらえ、また不安になる、という悪循環に陥ってしまうのです(2)。
 
つまり、「少しのめまいや不安は誰にでも起こりうることで、それほど心配する必要はない。少し様子を見て、続くようなら病院に行こう」というように、余裕をもって考えて行動できれば不安発作を起こしにくくなると考えられます。
 
それではこの『不安障害』と現代のネット社会は、どのように関わってくるのでしょうか。
 
 

『不安障害』と『ネット依存症』が併発!?

 

Yahoo知恵袋では(4)

Yahooが経営する質問投稿サイト、Yahoo知恵袋には、『不安障害』であると診断されたネットユーザーから以下のような相談が寄せられています。
 
「社会不安障害・軽いうつ病・ネット依存症19歳女性です。もう嫌です。ひとりぼっちで辛いです。家族に怠け者扱いされるのに耐えられないので家を出たいのですが、この病気に理解のある方、誰か助けてください(泣)」
 
「ネット依存症。不安障害で治療中です。将来このまま一人になってしまうのではないか、誰もそばに居てくれなくなるのではないかって…どんどん気持ちがネガティブになってきちゃいます」
 
これらの投稿からわかることは、『不安障害』の診断を受けている人は『ネット依存症』も併発していることがある、ということです。ある国の研究では、“ネット依存症の75%が精神障害を合併している”ことが明らかになったそうです(5)。
 
 

『ネット依存症』の実態

 
『ネット依存症』とは、ネットをしていないと不安になりイライラしてしまうために、食事などの時間を削ってでもネットをする時間を増やした結果、引きこもりや友人関係の悪化などを引き起こしてしまうものです(6)。
 
 

『ネット依存症』の人はどれくらいいるの?

 
2012年に行われた、1か月に1時間以上ネットを利用する日本人500人を対象としたアンケート調査では、“インターネットの接続時間は一週間に平均49時間”という結果が出ています(6)。
また平成26年の、総務省によるネット依存傾向の調査によると、スマホを保有し、LINEなどインターネット上でのコミュニケーションツールをよく使うユーザーのネット依存傾向が高くなっています(7)。
 
ネット依存傾向
図1.ネット依存傾向(日本のスマホ保有 / ネット利用別)
 
これを見ると、ネット依存の程度が中~高の割合は、スマホ保有者ではどんな利用用途でも半数以上に上ります。
 
 

『ネット依存症』の症状とは

 
『ネット依存症』の症状には、身体的なものと精神的なものの2つがあります。
 

身体的症状(6)

・頚肩腕(けいけいわん)症候群
首、肩、腕に何らかの病状があること。頭痛、ひどい肩こり、首や背中の痛み、手足のしびれなど。
 
・ストレートネック
本来緩やかに湾曲している首の骨が、真っ直ぐな状態になってしまうこと。肩こり、頭痛の原因に。
 
睡眠障害
パソコン画面から発されるブルーライトを長時間浴びると生活リズムが狂ってしまう。
 
眼精疲労、ドライアイ
 
腱鞘炎
 
など。
 
 

精神的症状(8)

基本は、
・自分の意思でインターネットをやめることができない。
・ネットをしていないと不安、イライラする。

 
という症状です。
しかし細かく見ていくと、軽度なものから重度なものまで様々な症状があります。
 
≪軽度なもの≫
・メールを何度もチェックする。
・インターネット端末がないと我慢できない。
など。
 
 
≪重度なもの≫
・インターネットをしているのを邪魔されるとイライラする。
・幻聴、幻覚の症状が出る。
・殺人、自殺への衝動がみられる。
など。
 
以上のように重度の依存症は命にもかかわってくる可能性があります。このように、『ネット依存症』には様々な弊害があるのです。
 
 

ネット依存から精神疾患へ!? 一番怖いのは合併精神疾患

 
それでは『ネット依存症』で一番問題となるのは何でしょうか?
 
それは『不安障害』などの精神疾患を併発してしまうことです(9)。なぜなら、依存症と『不安障害』のような精神疾患を併発してしまうと、回復を遅らせたり治療が困難になってしまう可能性があるからです(5)。
 
 

『不安障害』と『ネット依存症』が同時に起きるのはなぜ?

 
『不安障害』と『ネット依存症』、どちらかひとつでも発症してしまうと治療には時間を要し、命に関わる症状が出てしまうこともあります。しかもこのふたつは併発することもあるのですから怖いですね。
 
それでは、『不安障害』と『ネット依存症』、まったく違うふたつの症状が同時に起こってしまうのは何故なのでしょうか。東京大学大学院教育研究科身体教育学コース、東京大学教育学部附属中等教育学校、東京都医学総合研究所・心の健康プロジェクトの3団体による合同研究の結果(10)を参考に考えてみましょう。
 
 

パニック発作など『不安障害』には睡眠時間が関連する(10)

 
これまでの研究で、『不安障害』におけるパニック発作は睡眠不足が誘発することが分かっています。パニック障害の患者には不眠が多くみられるのです。
パニック発作は10代頃から発症件数が増えてきますが、現代の中高生は学年が上がるごとに就寝時間が遅くなり、睡眠時間が短くなっています。
 
そこで、東京大学大学院教育研究科身体教育学コース所属・股村美里・小塩靖崇・北川裕子・東郷史治・佐々木司、東京大学教育学部附属中等教育学校教諭・福島昌子・米原裕美、東京都医学総合研究所・心の健康プロジェクト・プロジェクトリーダー・西田淳志の計8名は、中高生を対象にアンケート調査を行いました。
 
その結果、パニック発作を経験したことのある中高生のうち、58%が就寝前、深夜12時を過ぎてからテレビやインターネットを利用していることが分かったのです。
さらにはインターネットなどの長時間にわたる利用が、ブルーライトなどの強い刺激による疲労や睡眠不足を引き起こし、それがうつなどの精神疾患に見られる自殺行為などと関連していることも示唆されています。
 
つまり、『ネット依存症』による睡眠時間の不足が、『不安障害』などの精神疾患を誘発している可能性が考えられるのです。
 
 

『ネット依存症』と『不安障害』、負のスパイラル

 
『不安障害』を引き起こすほどネットに依存してしまう理由。それはスマホの普及により加速する「つながり」への強迫観念であると考えられます(11)。
 
スマホの普及とともにLINEやTwitterなど、SNSの利用が一般化されたことにより、対人コミュニケーションの場はインターネット上のやり取りへと移行しました。SNSはいつでもどこでも誰かすぐに連絡が取れる便利なツールですが、その反面、友人の投稿にはすかさず反応しなければ仲間外れにされてしまうのではないか、悪口を言われるのではないか、という不安を利用者に植え付けてしまう側面があります(11)。
いわゆるLINEいじめなど、ネットいじめを恐れてスマホを手放せなくなってしまうのです。
 
友人とコミュニケーションをとるためにネットを利用し、ネットいじめなどの不安から依存症へと発展し、睡眠時間が削られ体に不調が現れる。
そしてその不調を不安に思うあまり再び発作を起こす、という『不安障害』が併発し、発作を起こさないためによりスマホを手放せずさらにネットに依存する…といったように、『ネット依存症』と『不安障害』が繰り返し悪循環を生んでしまうと考えられます。
 
 

ネットは情報の宝庫であり、諸刃の剣でもある

 
インターネットは現代社会にはなくてはならないツールです。コミュニケーションの場としてだけでなく、様々な情報を簡単に手に入れることができる、いわば情報の宝庫でもあります。
 
インターネット上に溢れる情報の種類は様々です。エンターテインメントの情報から、医療関係まで、もちろん『不安障害』や『ネット依存症』についての情報も得ることができます。
 
『不安障害』とはどんなものなのか、治すにはどうしたらいいのか。このような情報が簡単に調べることができるのはとても便利です。しかしネット上には、いい加減な情報や病気の治療の妨げになるような情報も存在しています(12)。
 
病気に有効な情報を得ることが出来たり、自分と同じ悩みを持つ人がいることを知れば希望を持つことができます。反対に「治すのは難しい」「治療がきつい」などのマイナスな情報を見ると、簡単に心が折れてしまうこともあります。
 
インターネット上の情報は、プラスになることもあればマイナスになることもある、諸刃の剣と言えるのです。インターネットの情報が全てではないことを知り、適切な利用を心掛ける必要があります。
 
 
ここまで、『不安障害』とネット社会との関連性について解説してきました。ネットの利用はスムーズなコミュニケーションと膨大な情報をもたらしてくれますが、使い方を誤れば深刻な精神疾患や依存症を引き起こしてしまうことがあります。
 
『不安障害』や『ネット依存症』などの病気の予防のために、そして情報化社会を気持ちよく過ごしていくために、我々はネット社会との適切な距離感を模索しながら、有効にインターネットを活用していきましょう。
 
社会不安障害について医師が解説した以下の動画についてもご参考にしてください。

 
 
【出典】
(1) メンタルヘルスONLINE http://www.k4.dion.ne.jp/~care/pd-inf.html
(2) こころのスキルアップ・トレーニング http://www.cbtjp.net/anxiety_disorder/
(3) 厚生労働省 みんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html
(4) Yahoo知恵袋 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1050929260
(5) 健康な体作りを目指そう! 病気の治療・対策辞典
http://medicaltreatment.info/archives/1332
(6) eo健康 インターネット依存症とは?
http://eonet.jp/health/special/special59_1.html
(7) 総務省 ネット依存傾向の国際比較http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc143110.html
(8) インターネットAddition -依存症-
http://www.angels-eyes.com/net_a/symp.htm
(9) RESIDENT Online 激増!「スマホ依存」からわが子を守る法
http://president.jp/articles/-/13259?page=2
(10) 東京大学大学院教育研究科身体教育学コース 股村美里・小塩靖崇・北川裕子・東郷史治・佐々木司、
東京大学教育学部附属中等教育学校 福島昌子・米原裕美、
東京都医学総合研究所・心の健康プロジェクト プロジェクトリーダー・西田淳志(2014).
中高生の子どものパニック発作と睡眠習慣に関する検討 不安障害研究 5(2),102‐109
(11) nippon.com  http://www.nippon.com/ja/currents/d00102/
(12) パニック障害・全般性不安障害の治し方 ネットの正しい使い方
http://fuan-syougai.com/%e7%9f%a5%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%8a%e3%81%8d%e3%81%9f%e3%81%84%e6%83%85%e5%a0%b1/%e3%83%8d%e3%83%83%e3%83%88%e3%81%ae%e6%ad%a3%e3%81%97%e3%81%84%e4%bd%bf%e3%81%84%e6%96%b9/
 
 
<執筆者プロフィール>
須賀 香穂里(すが・かほり)
神奈川大学人間科学部・人間科学科所属。社会心理学や人間関係をテーマとした執筆活動を行っている
 

オススメリンク

 
関連した情報として以下のようなものがありますので、ご参考にしてください。
 
「統合失調症の症状とは?」
 
「過食嘔吐の原因 : 過食嘔吐の症状は何が原因なの?」
 
「摂食障害とは どんな病気? 拒食と過食、症状など詳しく解説」
 
「PTSD とはどんな病気?PTSDの治療法や予防法は、どのようにすればいいの?」
 
強迫性障害 とは?イライラを起こす強迫性障害の原因、症状、治療とは?
 
「トラウマ とは何? トラウマの原因や身体への影響、治療法など解説」
 
「ストレス解消法 をしっかり学び、自分の身体と上手な付き合いを」
 
「ストレス診断 ってどうやればいいの?疲れた!と思ったらストレス診断!」
 
「仮面うつ病 とは? 内科の病気かな…と思ったら“うつ病”だった!?」

※なお記事中の語句に張られたリンクをクリックすると、当該語句について詳しく説明した当サイト内もしくは外部サイトの記事へ移動しますので、ご活用いただければ幸いです。